農家直送、漁師直送をはじめとする生鮮品のECサイト運営では、野菜・果物・鮮魚など新鮮な食材が手に入るので非常に人気がありますが、生鮮品特有の課題がクレームにつながることもあります。本記事では、農産物や水産物を扱うECサイト特有のトラブルと、未然に防ぐ対策のポイントについて解説します。

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食品ECサイトでの農産物・水産物販売のよくあるクレーム

野菜・果物・鮮魚などの生鮮品をECサイトを通じて販売する場合によくあるトラブルをまとめております。良品をお届けしているのにクレームが発生している場合には下記の項目に対して対策が十分に出来ていない可能性もあります。自社の取り組みを検討する上で参考にしてください。

商品に関する問題

野菜・果物・鮮魚などの生鮮品は、型番があるわけではなく、自然がつくり出すもののため、品質や鮮度を一定にはできません。自社の商品ページに掲載している文言や写真などはいかがでしょうか。以下の項目を参考にしながら、伝えきれていない箇所がないか見直してはいかがでしょうか。

  • 見ため:色や形、大きさなどのばらつき
  • 味・食感:脂のり、甘み、食感のばらつき
  • 香り:鮮魚独特の磯の香りなど知らないとお客様が驚く場合があるもの
  • 生育・水揚げ状況:その年の天候による生育、水揚げ状況の違いなど(リピート顧客向けの情報)

配送に関する問題

野菜・果物・鮮魚などの生鮮品は、衝撃や温度変化に弱く、非常に取り扱いがデリケートです。収穫、水揚げ時点の商品品質ではなく、お客様へ到着した時を想像して荷姿を工夫をしましょう。また収穫・水揚げ次第のように配送日指定不可の商品は、お客様からの要望や不満が起きやすいポイントでもあります。以下の項目を参考に、必要な対策を見直してみましょう。

  • 衝撃や温度変化:傷、つぶれ、ドリップ、色変わり、濡れなど
  • 配送タイミング:いつ配送されるかわからない、不在が続き商品劣化するなど

到着後の取り扱いに関する問題

作り手は商品のことを熟知しすぎるあまり、作り手の当たり前の常識が実は一般には知られていないことがあります。また、自分の地域や都道府県では常識でも、全国では知られていないこともあります。以下の項目を参考に、自社商品の取り扱い方法を見直してみてはいかがでしょうか。

  • 保管方法:温度や湿気、保管箱や袋などの注意点
  • 下処理:商品到着後すぐに必要な処理の周知
  • 調理方法:商品に合わせた調理方法のオススメ

野菜・果物・鮮魚などクレームを未然に防ぐ!5つのポイント

農産物・水産物のクレームを未然に防ぐためのポイントを5つご紹介いたします。クレームを未然に防ぐことは、顧客満足度向上にもつながります。顧客満足度が向上すると「美味しかった」「また注文します」などの嬉しいお言葉をもらう機会が増え、作り手としてモチベーションがあがります。また、店舗の信頼度アップやリピーターを増やす取り組みにもなります。自社のECサイト施策の参考にしてみてください。

ECサイトでの情報提供

果物・野菜・鮮魚などの生鮮品は個体差がある商品のため、十分に理解をしていただき購入する方が商品の満足度も向上し、リピート購入へもつながります。商品の強みや魅力だけでなく、下記要素も参考にしながら商品の特性をECサイトの商品ページに掲載しましょう。

  • 商品のばらつき・特性:ばらつきの度合など個人の感覚で違うものは写真を掲載する
  • 配送日の目安:目安を記載する(注文してから7~10日程度、〇月下旬よりご注文順に順次発送)
  • 状況の変化:今年は不作で小さめが多いが甘くて美味しいなど事前に状況の変化を伝える

多少の虫食い野菜は、逆に農薬を使っていない証拠とも言えます。表面にぬめりがある魚の方が新鮮な場合もあります。商品の特性をしっかりと掲載し、お客様へ理解を促しながら、食品を大切に食べていただく取り組みも重要です。

注文後のフォロー

配送日指定ができない商品を注文したお客様へは商品をお届けする前にしっかりと理解を促し、商品到着までお待ちいただくことが大切です。商品ページで掲載していても見逃す場合もありますので、注文後に個別にメールを送信するなどアプローチをすることも大切です。以下に記載するポイントをご紹介しますので参考にしてください。

  • 現在の状況(目安):目安を伝えお客様の受取スケジュールを調整をしやすくする。
  • 今後のアクション:お届けまでのお店の対応を事前に伝えて安心していただく。
  • 注意事項:お店のルールや重要事項は事前にしっかりと伝える。

※上記を盛り込んだ参考メール例
この商品は収穫(水揚げ)があったその日の鮮度の良いうちにお届けするため、配達日がお選びいただけない商品です。現在順調に収穫(水揚げ)がございますので、ページ記載の目安通り、1週間~10日程度でお届けできる見込みです。発送準備が整い次第メールにてご連絡差し上げます。なお不在や受取拒否などお客様のご都合で受け取れず商品劣化した場合はご返金など対応できかねますので、あらかじめご了承ください。どうしても受け取れない日があるなどはあらかじめご相談ください。とれたての〇〇をお届けいたしますのでもうしばらくお待ちくださいませ。

梱包資材の工夫

配送時の衝撃や温度変化などは、配送業者によるものが大きく、お店側でコントロールができない部分です。しかし、お店の梱包の工夫により、お客様へ届いたときの印象も変わります。例えば、衝撃に弱い商品を動かないように緩衝材を工夫してお届けすると、多少の衝撃を受けたとしても商品を守ることができ、そのお店の配慮をお客様が感じてくださり、商品満足度が上がります。また鮮魚で氷水を入れたチルド発送などは、お届けした時には氷が溶けてしまうため、見た目が悪くなってしまいます。保冷剤を使用するなど、実際にお届けした時の見栄えを考えて梱包資材を検討することが大切です。梱包資材の工夫は商品を大切に取り扱うことと同じですので、取り扱いが難しい生鮮品だからこそこだわってみてはいかがでしょうか。

初期不良のガイドライン

農産物や水産物は性質上、小さな傷や色の変化、ばらつきが避けられない場合が多いです。そのため、「見た目の軽微な傷、色のばらつきは商品の特性であり、品質に問題ない」といった基準を作ることをオススメします。その基準を元に、ECサイトの商品ページへの記載を検討するとより効果的です。また、再送や返金の基準などをあらかじめ作成しておくことで、お客様からのクレームにもスムーズに対応することができます。

保管方法・食べ方レシピ

生鮮食品の美味しさを最大限に引き出すためには、適切な保管方法や美味しく食べるためのレシピ情報を提供することが大切です。例えば、「冷蔵庫の野菜室で保存」「到着後2日以内にお召し上がりください」など、具体的な保存期間や保管温度を明示することが顧客満足につながります。また、料理が楽しめるレシピをパンフレットやECサイトや同梱パンフレットで提案することで、消費者の体験価値を高め、リピート購入につなげることができます。さらに、動画や写真を活用することで、商品の調理法がわかりやすくなり、消費者の料理へのハードルも下がります。これにより「また買いたい」と思ってもらえる機会が増えるでしょう。

まとめ

農産物、水産物などの生鮮品を取り扱うECサイト運営においては、商品のばらつきや配送中のトラブルが完全には避けられないことがあります。しかし、商品ページで特性や注意点を適切に伝え、梱包を工夫し注文後のフォローを丁寧に行うことで、クレームを防ぎ、顧客満足度を高めることが可能です。また、初期不良へのガイドラインを設けることで、社内を含めお客様対応がスムーズになります。商品を届けて終わりではなく美味しく食べてもらうまでを考えて、保管方法や調理法の提案を含め、購入者が安心して商品を楽しめる工夫をしましょう。日々の改善を重ね、顧客との信頼関係を構築することで、成功するECサイト運営を目指しましょう。